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Abstract 馬の錠剤化凍結精液において,精子生存率におよぼすグリセリン平衡,グリセリン濃度,糖の影響を検討し,また錠剤化凍結精液による野外授精試験を実施して以下の成績を得た。 1)グリセリン濃度 グリセリン1.75,3.5,7.0%の濃度の間の凍融後の精子生存率では,融解液を添加した場合3.5%の濃度が良好であった。 2)グリセリン平衡時間 、グリセリン平衡にともなう凍融後の精子生存率の推移は,糖の種類,融解液の有無によって差異が認められる。融解液を添加しない場合,凍融後の精子生存率は平衡時間の経過にともなって低下するが,融解液添加の場合シヨ糖では顕著でなく,ラフィノース-グリセリン液では逆に5時間までは改善される傾向が認められる。グリセリンを含まないものでは,シヨ糖,ラフイノースとも融解液の有無に関係なく,平衡時間の経過にともない凍融後の精子生存率は低下した。 3)糖の種類 シヨ糖,ラフィノースの比較では,5時間以上の平衡でラフィノースが優っていた。 4)融解液の影響 いわゆる緩衝糖液加牛乳を融解液として使用した場合,凍融後の精子生存率ならびに加温顕微鏡下における精子生存時間が延長される。 5)受胎成績 1965年に実施した錠剤化凍結精液による授精試験において42頭に授精して12頭に受胎を見た。供用雄馬3頭の受胎率はそれぞれ,47. 3, 26. 7, 12.5%で非常に大きな個体差が認められた。最も低い受胎率を示した雄馬の精液はドライアイス中で凍結したものを汽車輸送したほかは他と条件は変らない。 受胎例における授精の条件は,精液の保存日数1~28日,精子生存率は30~40%,1回の注入精液数は10~30で,一発情当りの注入回数は1~3回であった。 しかし同じ条件で不受胎に終った例もかなりあって,上記各種の要因と受胎との明らかな関係は見出し得なかった。 注入対象の雌馬の注入適期,排卵の有無を把握できなかった試験条件も考慮すると,前記雄馬の個体差のほかに,雌馬の条件がこの受胎成績にかなり大きな影響をおよぼしているように考えられる。