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Abstract ディーゼル軽油の深度脱硫 (硫黄含量0.05wt%) を達成するため, 市販のCoMoおよびNiMo触媒を各段で用いる低圧 (30~40atm) 二段水素化脱硫反応を行った。320°Cで深度脱硫を達成するには少なくとも水素圧50atmが必要であった。340°Cでは30~40atmで硫黄含量を0.06wt%まで低減できたが, 生成油が蛍光を呈した。第二段反応で深度脱硫を達成し, かつ蛍光着色のない生成油を得るには, 少なくとも40atmの水素圧が必要であった。また第一段反応で, 強い蛍光発色なしに硫黄含量を0.15wt%以下まで低減させておくべきであることが明らかになった。脱硫反応前後の硫黄化合物の分析により, ディーゼル軽油中で最も脱硫されにくい化合物は, 4-メチルジベンゾチオフェンおよび4,6-ジメチルジベンゾチオフェンであり, 深度脱硫の達成にはこれらの化合物の脱硫が不可欠であることがわかった。4,6-ジメチルジベンゾチオフェンの脱硫反応生成物は主として, メチルシクロヘキシルトルエンおよびジメチルビシクロヘキシルであり, ジメチルビフェニルは少量であった。前者の生成物ではメチル基の転位が起こっていたが, 後者では起こっていなかった。したがって, 隣接するフェニル基の水素化あるいはメチル基の転位によって, メチル基の立体障害を解消することにより, 脱硫反応が促進されると考えられる。NiMo触媒は, フェニル基の水素化活性がCoMoより高いため, より高い脱硫活性を示した。二段水素化脱硫は, 第一段で大部分の脱硫されやすい化合物を水素化を伴わず脱硫して水素の消費量を抑え, メチル基の立体障害で触媒上に吸着されにくい4,6-ジメチルジベンゾチオフェンを, 第二段反応でより効率よく水素化脱硫できる。つまり, 穏和な反応条件での効率のよい脱硫が行え, さらに全体の水素消費量を低減できる点で優れている。4,6-ジメチルジベンゾチオフェンの高温•低圧脱硫反応で生成する蛍光物質は, 分子量268であった。その構造と生成経路について議論した。