Abstract
マタタビにヨツボシクサカゲロウChrysopa septenpunctata WESMAELの雄が強く誘引されることは古くから観察されていたが,その誘引物質は不明であった。マタタビの実およびその虫えいから有効物質の抽出分離を試みた結果,その物質はエーテル可溶物の中性分画に含まれ,水蒸気蒸溜により溜出される。溜出物をカラムクロマトグラフで分離を繰返し,有効成分を含む分画を赤外吸収スペクトルで調べた。水蒸気蒸溜溜出物中に含まれるラクトンを分解除去しても,なお誘引性を示した。イソイリドミルメシンには誘引性はない。誘引物質は一種のアルコールと考えられる。 本物質の感覚受器は雄の触角に分布している。雌が誘引されないのは,雌の個体数が特に少ないためではない。