Abstract
タマネギバエ幼虫は摂食のため, また成虫は産卵のためタマネギに誘引される. しかし, 細菌で腐敗しかかったタマネギは, 新鮮なものよりはるかに誘引性が高い. そこで腐敗しかかったタマネギから誘引物質を産生している細菌 Klebsiella sp. を分離した. この細菌をタマネギ片に接種し37℃で3日間培養し, その嗅気をポラパックQカラムで捕集した. この嗅気物質を高速液体ガスクロマトグラフィーで分離し, 質量スペクトルにより化学構造式を同定した結果, 既知の誘引性硫黄化合物のほかに ethyl acetate, tetramethylpyrazine, n-heptanal, 2-pentanol などを含むことがわかった. これらの市販化合物を生物検定した結果, 幼虫に対して, ethyl acetate は単体で最もよく誘引し, tetramethylpyrazine, n-heptanal は混合することによって dipropyl disulfide の誘引性を数倍高めた. 一方, 成虫の産卵に対しては, ethyl acetate, tetramethylpyrazine が dipropyl disulfide の誘引性を数倍加した.