Abstract
2n=24本の染色体をもつエゾアカガエル(北海道産)、ヤマアカガエル(本州、九州産)、チョウセンヤマアカガエル(対馬、ウスリー産)の系統分類学的関係を、形態学的・遺伝生化学的手法を用いて調査した。その結果、エゾアカガエルは形態的にも遺伝生化学的にも他の2種から明瞭に区別され、遺伝学的調査の結果を総合すると、3種のアカガエル類は共通祖先から3分岐したものと推定された。この結果と文献中にみられる交雑実験の結果とを考慮すると、エゾアカガエルは、ヤマアカガエル、チョウセンヤマアカガエルと別種として扱われるべきと判断される。さらに、しばしばエゾアカガエルと同一種とされる中国陜西省産のアカガエルは、文献資料からみる限り、形態的にエゾアカガエルと明瞭に区別され、分布の面からも両者が同一種である可能性は低いと考えられる。これらの事実に立脚して、北海道札幌産の雄個体に基づくエゾアカガエルを正式に記載し、新種名を与えた。本種は短い後肢をもつことで形態的に特徴づけられる。東アジア産で2n=24本の染色体をもつアカガエル類の関係について論じ、チョウセンヤマアカガエルの対馬産とウスリー産との間で、遺伝的分化がかなり進行していることも示唆した。