Abstract
大気から水への運動量およびエネルギー遷移についての方程式を使って, 卓越波の発達を議論する. 発達初期の波について, 卓越波が一定の波形勾配をもち, この波に対する形状抵抗係数Cf0が一定と仮定すると, 実際に観測される初期波の発達と矛盾のない結果が得られる. Cf0一定という仮定は, 吹送距離が15m以上, 波長が10cm以上の波にあてはまり, 高さ10cmを基準としたCf0は, 滑面の抵抗係数Css (Css≅0.0008) の約20パーセントにすぎない. これによると, 卓越波の発達は, 吹送時間についてt2/3, 吹送距離についてx1/2に比例する. この理論を, 一定波長で波高が増してゆく正弦波に適用すると, Cf0を適当に仮定することによってPHILLIPSおよびMILESの理論による波の発達率を導ける. すなわち, この論文できめた初期波のCf0 (Cf0=1.7×10-4) は, MILESの遮蔽係数β=1.4, JEFFREYSの遮蔽係数s=0.011, STEWARTの波の抵抗係数C=1.3×10-4と同等である. 卓越波の形状抵抗を, 2乗平均の波峯の高さでの風速と波速との差に関係づけることによって, 波と風との平衡状態を議論するので, この理論では, 波峯の高さでの平均風速より大きな波速をもつ卓越波は説明出来ない.