Abstract
海水中のコバルトの定量について操作の詳細を叙述した. この定量法は, 固体二酸化マンガンを用い吸着によって海水中の微量コバルトを濃縮する操作, 硝酸による脱著操作, 2-ニトロソ-1-ナフトールを用いる溶媒抽出操作およびニトロソR試薬による分光光度測定から成立っている. 分析の際には, コバルト-58をトレーサーとして用い, コバルトの回収率を吟味する. ここに述べた簡便なコバルトの濃縮法によって, 最少の汚染で, 比較的多量の試料を短時間内にとり扱うことができ, かくして船上および実験室で日常業務としてコバルトの分析を行なうことが可能になる. この方法による海水中のコバルトの定量の限界は20lの試水を用いた場合0.05μg/l付近にあり, 一方全量5μg Coまでの範囲で, 単一分析に対する標準偏差は0.1μg Coと推定される. この方法によって測定されるコバルトの化学型は, おそらく水和状態にある2価の灘バルトイオンであり, コロイド分散状の3価のコバルトが存在すれば, これもまた測定されると考えられる.